ネコリンピックの新作を持って海外転戦した話

ネコリンピックって何?

micro:bitとScratchと簡単な器具を組み合わせてゲームコントローラーにし、身体を使うスポーツゲームを作るプロジェクトです。

micro:bitのセンサーで取得した身体の動きをScratchlinkでPCに飛ばして、画面上のネコ(ScratchCat)にスポーツをさせます。

自分の身体がどのような動きをするのか、それをどうセンサーで取得するのか、どうゲームとして面白くするのか、と総合的に考えるSTEAMプロジェクトの見本として作っています。
Scratchで書いているので子どもにも理解でき、これを参考に自分のオリジナルゲームを創造してもらうのが目的です。

ネコリンピック用ゲームコントローラーの例

スケートボード
写真下の板です。裏側にペットボトルをガムテープで貼り付けてあります。
両足で乗って左右に傾けると、micro:bitの加速度センサーが反応して、傾いた方向をゲームアプリに通知します。

ボートレース
右上の自転車用空気入れです。ハンドルの上下をボートのオールの動きに見立てています。
ハンドルに着けたマグネットとmicro:bitの磁気センサーの距離が変わることで、ハンドルの上下を検知します。

アームレスリング
左上の器具ですが、これは本当のアームレスリング練習器として売られているものです。
ハンドルをつかんで傾けると、上に着けてあるmicro:bitが傾きを検知します。
(具体例はネコマ製作所をご覧ください。)

最近作を2つご紹介しておきます。

スケートボードゲーム Unity版

これまでScratchで作っていたもの(下の写真参照)をUnity化しました。
スケボーで街を疾走しながら落ちているアイテムを拾うゲームです。板のコントローラーに乗って左右に体を傾けてネコを制御します。
Unityにした理由は、Scratchを卒業した子が次の言語を学びたい場合、ゲームを作るならUnityが情報量が多くて良いだろうということです。
ゲームショウで展示する場合、他の人の作品はほとんどがUnityで作ってあるので、バランスがよいためでもあります。

UnityにするとScratchlinkは使えませんので、micro:bitにBLEHIDの拡張機能を書き込んで、PCからmicro:bitがキーボードとして見えるようにしてあります。
micro:bitが右に傾くと「→」キー、左に傾くと「←」キーが押されたと認識して、ネコを動かすようにプログラムしています。

ボートレース

ボートを漕いでゴールまで向かうタイムレースです。空気入れのコントローラーを押し引きするとボートが進みます。
このゲームは以前からあるのですが、最初はコントローラーとしてゴム製のエキスパンダーを使っていました。足にはめたエキスパンダーを手で引き上げて、その時の手首の返る角度をセンサーで取得していたのですが、簡単にチートできてしまうので、コントローラーを空気入れに変更したものです。

これらの作品を持って、各地のMaker Faireやゲームショウなどで展示(ドサ回り)しておりますが、2023年は何と3回も海外展示の機会がありましたので、ご紹介させてください。

Maker Faire Rome 2023

2023年10月20-22日

会場はローマ・フィウミチノ空港近くの、Fiera di Romaという大規模コンベンションセンターです。ビッグサイト西ホールくらいのホールが10個以上並んでいて、そのうち7個を会場にしているのでスペースに非常に余裕があります。カテゴリごとに会場が分かれていて、自分はEducationカテゴリに出展しました。
Maker Faire Rome 2023
ローマ商工会議所がバックについているのでブースは立派で、個人でも幅が3mくらいのブースがタダでもらえます。東京や京都だと長机1本のスペースを借りるのも有料なのでそこはえらい違いです。

スペースがスカスカにならないように、スケートボード(Unity版)、アームレスリング、ボートレースの3種類のネコリンピックを展示しました。つまりPC3台と器具を持っていくわけで、手荷物の重量が制限ぎりぎりな感じです。
会場は広いですが設備はわりとお粗末で、駅のエレベーターは壊れているし、トイレは2個室しかないし、ビッグサイトを想像していると大変なことになります。公共施設のメンテがお粗末なのはイタリア全体がそうみたいですが。

観客はEducationカテゴリのため、子連れファミリーや学生のグループ、引率された小学生など、どこの国でも同じですが、特にファミリーに喜んでもらえました。

英語の説明書を用意して行ったのですが、イタリアは思いのほか英語が通じず、身振りでプレイの仕方を説明するハメになったため、急遽イタリア語の説明を手書きで作りました。いまはGoogleやDeepLがあるので助かりますね。

Maker Faire 深圳 2023

2023年11月11-12日

ハードウエア開発企業のseeed studio(GroveやFusionPCBで有名)と、傘下のメイカースペースである柴火創客空間(Chaihuo Makers)が主催者で、Raspberry Pi財団や、NVIDIAもスポンサーになっているため、ここも無料で参加できました。
Maker Faire Shenzen 2023
会場は柴火創客空間の置かれている「万科設計雲城」という、開発系企業の集まるオフィスセンターです。ここの通路を利用したりしてブースが設置されました。
個人のメイカーの他、大学やベンチャー企業のブースが沢山あるのが特徴です。

ところで中国に渡航するにはいろいろ関門があります。
現在は観光も含めビザが必要なので、ここが最初の関門 でした。
香港から越境する場合は、毎日先着50人だけ、無審査で5日間観光できる特例ビザが発行されるので、それを目当てに深夜便で香港に向かう方もいるのですが、確実にもらえるわけではないのでこの方法は諦め、正攻法でビッグサイトの隣にある中国ビザセンターで申請しました。

ビザにはいろいろカテゴリがあるのですが、主催者が招待状を送ってくれたので、文化交流のカテゴリで申請してみました。
主催者が企業のため、係官に「ビジネスではないのか?」と聞かれましたが、メイカーフェアの主旨、ボランタリーであることを説明してOKがもらえました。
ビジネスビザにされた人もいるようなので、この辺は係官の解釈次第なのでしょうか?(ビジネスビザだと発給料が高いのです)

送ってくれる招待状は英語がデフォルトですが、念のため中国語版ももらっておいたところ、空港の入国審査で入国目的を説明するのに役に立ちました。入国係官も英語が得意ではないようで、英語版に苦戦していましたが、中国語版を見せたらすんなり通過できました。
尚、ホテルや空港以外英語はほとんど通じないので、翻訳機と筆談必須です。タクシーはUberのようなアプリを使えば行先を言う必要はないですが、空港で乗ったり、道で拾った場合は、紙に行先を漢字で書いて見せるのが確実です。

2つ目の関門は現地の支払い手段です。
深圳はコンビニやタクシー、個人商店に至るまでQRコード決済が浸透していて、現金はあまり使えません。使えないことはないのですが、おつりを十分用意していないので歓迎されない感じです。カードも空港やショッピングモール、外国人向けホテル以外は使えないと思った方が良いです。

QR決済はWeChatPayとAlipayが2大サービスで、あらかじめ日本でアプリをダウンロードしてカードを紐づけしておく必要があります。VISAかMasterCardの紐づけができます。これは2023年7月20日から可能になり幸運だったのですが、それまでは中国銀行の口座がないと使えませんでした。
WeChatペイとアリペイ、海外クレジットカードとの連携が可能に

3つ目の関門がインターネット環境です。
ご存じのように、中国のインターネットは金盾と呼ばれるファイアーウォールでGoogleやFacebook、Xなど我々が日常的に使っているアメリカ系のサービスを遮断しています。また日本で現地の下調べをするにも、GoogleMapは中国の情報が更新されていないため役に立ちません。
あらかじめこれらに相当する、検索サイトの
「百度(Baidu)」や「百度地図」
をインストールしておく必要があります。
とはいえ現地でも日本との連絡にGmailやFacebookを使う必要があるので、モバイルルーターは「プレミアム回線」というVPN経由のものを契約しておきました。


展示は外国参加者を集めたエリアで行いました。外国勢の中では日本が最多で、7グループ出展していました。

中国でも子どもの反応は同じで、ここでもファミリーに人気がありました。

台湾G-EIGHTゲームショウ

2023年12月8-10日

make.ctrl.Japanという、変わったゲームコントローラーを使う自作ゲームのグループに入れて頂いています。
make.ctrl.Japan
今回は8回目の展示で、台北で行われるインディーゲームの展示会に参加することになりました。
G-EIGHT 遊戯展

会場はMRTの圓山駅前にあるエキスポドームです。
入り口近くにグループの特設コーナーを作って頂いていて、大変な反響がありました。

メンバーの作品はレベルが高くてネコリンピックごときですいませんなのですが、ネコリンピックは説明不要のゲームなので、ここでも子どもには人気でした。
現地のメディアの反響→不尋常手把的遊戲展「make.ctrl.Japan」首度來台

台湾はもちろんビザ不要、日本と文化や雰囲気が近い感じで、公安や警備員が多い中国本土にくらべてリラックスしていられます。飛行機も行きは3時間半、帰りは2時間40分と、新幹線で関西に行く程度の時間で着いてしまいます。
気候は温暖、食べ物もおいしいし、インターネットも普通に使えるし、また機会があればぜひ行きたいと思います。


どこも異国ですので言葉の不自由や、予想外の事態で冷や汗かいたこともありますが、世界の人の反応を直接感じられ、どの国の人も楽しめることがわかり、次に進むモチベーションになりました。
費用もかかるし準備が大変なのですが、早くもまた別のところへ行きたいという欲が出てきています。

以上