「さ~ボード」プロジェクト(0)ー 小学校の「インストール問題」

私は数年前まで、小学校で使用する成績集計ソフトの開発が主な仕事でした。開発するだけでなく、導入のサポートや使用方法の校内研修のため学校現場に赴く機会が多かったのですが、そこで直面するのが学校のPCのセキュリティの壁です。

成績や顔写真、名簿など個人にかかわる情報を扱うものですからセキュリティが高いのは当然ですが、それにしてもソフトをインストールするために管理職の先生をお呼びして、一台ずつ管理者権限で再起動するとか、それ以前に教育委員会からインストールの許可が必要だったり、光学ドライブが使用できないとか、専用のUSBメモリ以外は認識しないとか、シンクライアントなので教育センターへ行ってサーバー側にインストールしないといけないとか、いろいろな壁に手こずらされました。

この問題は児童用のPCでも同じで、お仕着せでプリインストールされているもの以外のソフトを導入するのは手間のかかる話になります。意欲のある先生が新しい教材をインストールしようと思うと、教委の許可→40台以上のPCの管理者権限での再起動→インストール→ユーザー権限への変更という作業が必要になります。文科省は今後、3クラスにつき40台程度の児童用PCを標準にするようですので、小規模校でも80台、中規模校でも200台以上で作業することになります。

もちろんWebアプリやファイルコピーだけで動作するソフトもあり、またICT支援員に作業を助けてもらうこともできるでしょう。

ただ、新学習指導要領では必ず行う必要があるプログラミング学習では、センサーやモータなど物理的なデバイスを扱うソフトは、ほとんどがデバイスドライバのインストールが必要で、この「インストール問題」は避けて通れないことになります。

この問題の解決策の一つが、青山学院大学の阿部和広先生が考案した「いぬボード」という製品で、スイッチサイエンスさんから発売されています。

この製品はPCのオーディオ出力を、デバイスとのインターフェースに利用する発想です。PCのイヤホン端子、マイク端子と「いぬボード」をケーブルで接続します。Scratchなどのプログラムから「いぬボード」に音を出力すると「いぬボード」のスイッチがオンになりLEDを点灯できます。反対に「いぬボード」についている光センサーが反応するとPCのマイク端子から音が入力され、センサーが反応したとわかります。

オーディオ端子なのでまずほとんどのPC、タブレットにはついていますし(最近のiPadはアダプタが必要ですが)何よりデバイスドライバのインストールが必要ありません。

「いぬボード」だけでも新学習指導要領で例示された小学校6年理科のプログラミングの授業に使えるのですが、基本的には光センサーで周囲の明るさを取得し、明るさに応じてLED1個をオン・オフするだけなので、物足りなさがあります。もう少し発展的に、サーボモーターを利用して何かを動かすことができると楽しそうです。また複数のLEDやモーターを扱えるとさらに広がります。

そういうのがあると良いのですがありません。ないものは作るしかありません。

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